あの頃、ふたりで。

遠い昔のラブソング

旭川で

旭川駅叙景

隣のメイをぼんやり眺めていると、君は俯くように動いて足元に視線を落とした。露わになった細いうなじに僕の左手は吸い寄せられ、気付けば白い襟足を際立たせているショートボブに触れていた。君の瞳が何か言いたそうに揺れた時、目の前でドアが閉まった。…

イチゴ

愛らしいイチゴ模様を身にまとった君は、愛らしさに輝く笑みを僕に向ける。両の手で君の頬をそっと包めば、愁いを帯びて潤んだ瞳はキラキラとして眩しいほど。始まりを予感させる口づけを、そっと閉じた瞼に優しく贈ろう。ほんのりと紅が射すような口づけは…

金色のウィスキー

僕は唇を重ね、琥珀色の液体をメイの口にそっと注いだ。味わえる程度の量を、と考えたせいだろう、ちょっと多かったらしい。ゴクリと飲む量が入ってしまった。 「ム~ウ~!!!」 口を開けられない君は眼を大きく瞠いて僕の胸を叩く。 《いけね!》 すぐに…

反則

通りに面した大きな窓のレースのカーテンが、薄ぼんやりと白み始めている。遮光カーテンを開けた時はまだ闇の中だったから、あれから少し眠っていたようだ。 静かにゆっくりとしたリズムで聞こえているのはメイの寝息だ。間近で耳にする生命の気配は大きな安…

オニと鉄紺

「私ね、職場でオニメイって呼ばれてるのよ」 いきなり何て話題だろう。それにしてもオニとは。確認が必要だろ。 「オニって、あの鬼?」 「そ、あの鬼」小気味がいいくらいにキッパリと断言する。 「ええっと!?」変な声が出てしまった。どんな反応をして…